『太公望 上』 宮城谷昌光 

読了。感想は『下』にまとめます。

太公望〈上〉 太公望〈上〉
宮城谷 昌光 (2001/04)
文藝春秋

この商品の詳細を見る

『仮面の告白』 三島由紀夫 

官能的で、暗く、でも引きずり込まれる筆致でした。
読んでいるとずるりと自分の気持ちまで沈んで来ます。引き摺られます。でも文章に惹きつけられて読みたくなる、なんだか魔性です(笑)

『たそがれ色の微笑』 連城三紀彦 

相変わらずうつくしい世界観の短編集です。
ミステリというわけではないのですが、ささやかな謎とどんでん返しは健在です。
どろどろしていない不思議な、淡々とした恋愛観が心地よい1冊でした。

「落葉遊び」
謎の内訳は解りやすい。綺麗な日本語と、繊細な人物像が読ませます。
登場人物の心情がとても見事に描写にあらわれていて、国語のテスト問題にでも使えそう(笑)

「たそがれ色の微笑」
主人公の女性が可愛いです。
解説の方も同じようなことをおっしゃっていたのですが、連城先生は女性心理を描くのがお上手だな、と思いました。途中で先生が男性作家だということを忘れそうでした(笑)

「白蘭」
切ない。泣かせます。
関西弁の一人称が気持ちいい。有栖川先生の作品を読んでいるときにも似た感覚。
題とラストの相関も好きです。
ミステリ短編集「花葬」シリーズでも思いましたが、連城先生は「花」というモチーフがたぶんお好きか得意かなのだと思います。そして確かにお上手なのですよー。

「水色の鳥」
目の付け所が特殊な「離婚話」。
重たくなりがちなテーマにもかかわらず爽やかで優しい気持ちになれます。主人公の男の子に共感しました。
あとがきまで読んで、ひとつのお話として完結するのだと思いました。題の由来が面白いです。


「風の矢」
いっちゃん好きです。(ラブ)
子狐と武士の不思議な関係。一番謎に翻弄された話でもありました。
地面に這うような動物的な、子狐の目線からの描写がされています。
最後まで読んだら再読したくなります。

『快楽の伏流 鑑定医シャルル』 藤本ひとみ 

男色・強姦・快楽殺人が絡んでくるためとてもグロかったです。
男色はともかくとして後者2つは私にとっては鬼門といってもいいテーマなので顔をしかめずにはいられませんでした。
とにかくこの鑑定医シャルルのシリーズを通して思うのは、精神学的(心理学的)な通説で人間を割り切りすぎだということです。統計的にそう言われているから、だけで人間が説明されるとは私は思いません。

読者が意味を取り違えやすい書き方のモノローグ挿入も、初作こそだまされたもののシリーズで読んでいくと慣れてきて、消去法でオチまで解るようになってしまうので少々残念。それでも、オチまでの過程できちんと引っ張ってくれますが。
毎回違う「ママン」にくらくら来ちゃってるシャルルは解せない。
各シリーズ最低1人の女性に心を許している感じの描き方をされているのですが、それは「厭世的」「人嫌い」という描写にはそぐわないと思います。
キャラとして可愛い奴だなとは思うんですけども〜。

『鑑定医シャルル 歓びの娘』 藤本ひとみ 

鑑定医シャルルシリーズの二作目。心理学・精神病関係の香りが濃厚なのは前作同様。人死にはあるし警察は介入するけど個人的にこれは「推理小説」ではなく「小説」だと思います。なので「その他国内小説」に分類です。ただひとつふたつ提示される謎には一応オチが付いているので、風呂敷を広げっぱなしとかそういうことはないです。心理学・犯罪心理なんかに興味のある人ならば楽しく読めるのではないでしょうか。
でもあまりにも心理学的な分析だけで人間を割り切ってる感があって、人間の中身ってそんなに簡単なもんだろうかとちょっと疑問でした。
それでも前作よりもピリピリせず読めたのは多分どろどろの恋愛色というのがなかったからですね(笑)
しっかしアッサリアニエスがいなくなっているのがショックだった…シャルルアニエスのその後が気になって続編も借りたのですが。ラブラブしてたらええなと思ったのですが。コロコロ相手を変えたり捨てたり別れたりする男にはハマれない。その時々いつも本気だとか言ったらもっとヤダ★シャルルはアニエスに対して本気なんだと思ってたんですけどもー一途な人が好きなもんで、ちょっとガッカリでした。一行で片付けられてしまった。それならアニエスのことは一言たりとも言及しないでいてくれればこっちで勝手に想像したのになー(十八番だぜ妄想!)

『陰陽師 龍笛ノ巻』 夢枕獏 

『呼ぶ声の』でがっつんやられました。かっわいいなぁ晴明と博雅の会話は…!
あの会話だけでおなかいっぱいです。
そして賀茂保憲様。キャラは割りと立ってるんだけど激しい活躍をするわけでもないので好きとも嫌いとも今のところ言えません。

陰陽師 龍笛ノ巻 (文春文庫)陰陽師 龍笛ノ巻 (文春文庫)
(2005/03)
夢枕 獏

商品詳細を見る

『ハプスブルクの宝剣』 藤本ひとみ 

最初は書きたい主題が見えませんでした。
主人公@エドゥアルトがオーストリアの危機を救って認められていく様を描きたいのだったら不要な人物が多すぎると思ったのですね。特に女性。ぱっと出てすぐに消えてしまう女性の登場人物が序盤に複数いたから。マリア・テレジアに関してもどうしてあそこまで絡ませるのか解りませんでした。オーストリアにエドゥアルトを縛っておくにはフランツがいるだけで十二分に見えたので。
でも終盤のとあるエピソードで、これはエドゥアルトのユダヤ人という設定によってアイデンティティの問題を取り上げたかったのだなーとようやっと解りました。このエピソードがあるから本作を見直したので(笑・それまでは恋の鞘当がしつこすぎてちょっと辟易していた)、二人の女性は必要ですわな。
それでももう少し人物の数は削れたんじゃないかなと思います。ページ数の割に多かった。史実に基づいている分、事実として接触があった人物同士を削るわけにいかなかったのかな。私は西洋史に詳しくないのでどこまでがオリジナルの人物でどこまでが史実上の人物なのか判断が出来ませんが。

本作を読んで、西洋の外交というものを端的に知りました。常にヨーロッパとその周辺諸国の動向に気を配り、相手の人間関係や置かれている状況や求めているものを的確に読み取って、国益のためになるよう先手先手を打ってゆく。17〜18世紀の世界観で既に普通にこれなら、日本が西洋に比べて外交下手だと言われるわけだ。
日本国内もドイツのように藩という小国家に分かれていたわけで、藩同士の『外交』はもちろん行われていたでしょう。
でもそれは多少の違いはあれども同じ言葉と文化と歴史を持った相手とのことで、全く違う言葉と文化と歴史を持つ国家との外交に関して日本は19世紀に入ってようやっと本格的に取り組み始めたんですよね。年季が違う。
頭脳戦を近代日本と比較するのが面白かった。

人物像について。言ってしまえば腐女子好み…?(笑)
フランツとフリードリヒのエドゥアルトへののめりこみ方も激しいですが、エドゥアルトも随分二人に執心する上女性とも恋愛を繰り返すのでなんだかエディの人物像が後半になるまで安定しなかったです;;
女性だけでもころっと相手が変わって、全て熱愛っぽく描かれてたので、一途な人が好きな私的にあまりはまり込めませんでした。
ていうか女性に対して執念のような恋愛をしながらもフランツのこと大好きなんですよねエドゥアルト…
女性へのエドゥアルトの気持ちは凄く感情的に、フランツやフリードリヒへの思いはもっと落ち着いた深いところから来ているように書かれていたのでむしろ女性=表面的な愛・フランツたち=心から愛 に、見えてしまいました。
だから前半の、両方に気持ちが行っちゃってるエドゥアルトは章ごとに人が違うみたいだった。章単位でなら分裂してなくておっもしろく読めるのにお話として見た途端人物として破綻してた、と感じました。序盤の限りではコレ長編じゃなくて短編連作のがそういうところ目立たなかったんじゃ? と思ったくらい。
テレーゼとの愛憎を消化した後はフランツと言う名の一本筋が通った感じで(…)性格がブレなくなって、引っ掛からず読めました。

ハプスブルクの宝剣〈上〉 (文春文庫)ハプスブルクの宝剣〈上〉 (文春文庫)
(1998/06)
藤本 ひとみ

商品詳細を見る


ハプスブルクの宝剣〈下〉 (文春文庫)ハプスブルクの宝剣〈下〉 (文春文庫)
(1998/06)
藤本 ひとみ

商品詳細を見る