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『毒入りチョコレート事件』 アントニイ・バークリー 高橋泰邦訳 

有栖川先生が薦めていたミステリ。ハヤカワのミステリベスト100みたいなヤツにもランクインしているようです。
上質で公平な本格ミステリでありながら、本格の多くの作品で行われるアンフェアな書き方(手法)に対する批判とも読めます。
処々で言われる「本格へのツッコミ」は的を射ていて、作家が読んだら耳が痛いことでしょう。
探偵役は一人ではなく、事件に関わってくる人も含めると登場人物が大目なのですが、各キャラクターいきいきと書き分けられていました。
特に私は犯人の凛とした姿、幕切れがとても良かったと思います。
美味しい本格で、読後感も気持ちいい良作。さすが有栖川チョイスです(そこか)

『幻の女』 ウイリアム・アイリッシュ 稲葉明雄訳 

ハヤカワミステリのミステリベスト100みたいなのでトップだった作品。
ミステリアスでとても美味しい作品でした。
描写の幻想的な美しさと、人物の心理面が丁寧になぞられているのも良かったです。
謎解き要素がメインながら、「女を追う」というサスペンス要素も加わっており、ドキドキハラハラさせられました。ジェフリー・ディーヴァーのリンカーン・ライムシリーズと空気が近い気がします。
ただ本格ミステリスキー的には、ややご都合主義的な部分と狂気という解釈が引っかかりました。

『王妃の首かざり』 モーリス・ルブラン 岡田好恵訳 

アルセーヌ・ルパンシリーズ。ルパンの初犯を描いた「王妃の首飾り」に、若かりしルパンの失敗談「アンベール婦人の金庫」を併録。
後者は冒険譚に近いですが、どちらも素敵にミステリです。
とにかくルパンが格好いいです(笑)失敗していてさえ格好いい。
「私」とのやりとりも軽妙で可愛く、是非未読の他作品も読みたくなりました。

『ゼルプの欺瞞』 ベルンハルト・シュリンク 平野卿子訳 

数少ないドイツ語圏ミステリ。
ドイツ・ミステリ大賞を受賞したそうですが、ミステリというよりは第三帝国とそれに従順してしまった世代への弾劾小説という色が濃いと思います。
本格ミステリとはとてもとても言えないです(笑)論理とか推理とかはありません。投げちゃってます。
一応主人公は私立探偵ですが、この私立探偵は元はナチス体制下で地方検事をしていたのです。
そして、(巻末の解説でもでも言及されてますが)著者は所謂「第二世代」「六十八年世代」の人です。この世代の人たちはナチスの世代=自分たちの親世代に対して、「過去を過去として流してしまおうとするな」「あのとき何をしたかを忘れるな」という風に詰め寄った世代らしいんですね(『戦後ドイツ』照)
つまりシュリンクは、ナチス体制の中に疑問を持たず所属していた「ゼルプ」という老人を親世代の一種の象徴として用意して、ナチスドイツを忘れさせないためにこの作品を書いたんだと思います。
シュリンクの別の有名本「朗読者」なんかもそうですが。
戦後の世相や、第一世代の思考の雰囲気を感じるにはいいかもしれません。割と日本のドイツ本はドイツを持ち上げる傾向がある感じがしますが、綺麗なだけじゃないドイツが見られます。
ミステリとしての期待はあんまりしないほうがいいです(笑)
しかし一番訳者さんに文句を言いたいのは、このシリーズの一冊目、「ゼルプの裁き」のネタバレが作中にあること…!(悔)
みんながみんな一冊目を読んでくるわけじゃないんだよー!(何)

『ベンスン殺人事件』 S・S・ヴァン・ダイン 

これもまた本格黄金時代の巨匠、ヴァン・ダインの処女作。
骨相学・「フェアプレー」・心理学・復古主義的引用の山・「西洋の没落」・東洋への憧憬、とクロフツ以上に露骨な形でこの頃(WW1後)の西欧人の心理面や流行が盛り込まれている作品。
面白いです(愛)流石…!
「語り手」が「私」ことヴァン・ダインになっていた辺り、有栖川先生はヴァン・ダインも好きなのかしらと思ったりしました。火村・有栖と同様ファイロ・ヴァンス(探偵役)も三十五歳らしいことも。
冒頭からヴァンとヴァンスの関係がツボにきて掴みはオッケーだったんですけど(死)そこから先ヴァンは悲しいほどキャラが薄くて、はっちゃけ語り手なしの三人称で書いてしまえばよかったのでは?と思うほど。
むしろマーカム(NY地方検事)とのコンビがグーでした。
でもヴァンはヴァンで何気にヴァンスにぺったりくっついていてときめくっちゃトキメキますが(帰れ)
トリックの面ではクロフツの方が上か? という感じなのですが、ヴァン・ダインはキャラクターがかなり良かったです。あと独自の論理論(変な日本語だな;)が面白かった。

『樽』 F・W・クロフツ 

アリバイの巨匠クロフツの処女作。これを読まないでアリバイトリックが語れるか!?って古典なのに今更読みました(ダメ子)
WW1後に出てきた所謂本格黄金時代、ミステリ第二世代とも言うべき作家たち(クリスティやヴァン・ダインなど)の中に含まれるクロフツですが、この頃のミステリ作家に共通して言われる「WW1前の欧米世界への憧憬」というのがはっきりとあって、WW1の影響の強さを感じました。
探偵役に据えられる人というのが複数いるので、最後まで誰が主人公なんだかよく解りませんでした。
犯人だけは犯人だったので(何)いっそヤツが主役かというくらい(笑)
その複数の探偵役のキャラクターはそんなに個性的に分けられてはいないのです。工夫すれば一人の探偵役だけでもやれたのでは…?
クロフツはトリックは上手いが小説は下手、という評があるそうですが、構成力はともかくとしてキャラクター創造という点では当たってるかもしれません。
トリックは確かに素朴かつ盲点を突いて来る感じだし、「樽に詰められた死体」というのもミステリアスで、良いアリバイものでしたv

『アクロイド殺人事件』 アガサ・クリスティー 

発表当時フェアプレー論争の勃発によってでクリスティーの名を広めた「問題作」。ポアロもの。
そのフェアプレー論争や問題の核心についてちょっとでも知っているとトリックはすぐに解ります。だからその辺は何も知らないで読むのが一番だと思います…。
私は悲しいことに、授業で先生が喋っちゃったので!(泣)
一度しか使えないトリックだけど、初出時に論争がおきたことも読者が綺麗に騙されたろうことも想像はつきます。
バリエーションにもしようがないので、後続はみんな「クリスティーの模倣」でしかない作品になってるでしょうな。
さすがクリスティでした。

しかしこの作品においてポアロが犯人にしたことは犯罪的だと私は思います。ポアロの倫理観とホームズ嫌いが、ポアロを好きになれない理由ですね(笑)
ヘイスティングス君不在は寂しかったけど、寂しがるポアロは可愛かった。

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