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『みずうみ 他四篇』 テオドール・シュトルム 関泰祐 

『みずうみ』
『マルテと彼女の時計』
『広間にて』
『林檎の熟するとき』
『遅咲きの薔薇』
の五篇を収録した短編集です。
特に表題作の『みずうみ』はシュトルムの代表作でありドイツ文学史に残る傑作と言われる作品。
きらきらしい描写(筆致)と主人公の柔らかく繊細な心情描写が美しいです。
爽やかでときに切ない青春がありありと形にされていました。

シュトルムの文章は全体的に若々しく瑞々しく淡々としているように感じました。
綿密で目の前にたち現れるような自然の書き込み方も印象的です。自然の多い土地にお住まいだったのでしょうか…。
この五篇がよいのか、「シュトルムの作品」がよいのか、どの作品も人間が素敵で、タイトルを見ると彼らのことを思い出します。
人生の中の「青春」という部分をとても上手に、鮮やかに切り取る人だと思いました。

みずうみ―他四篇 / シュトルム、関 泰祐 他

『ハインリヒ・ベル小品集』 ハインリヒ・ベル 谷山徹 

『エルザ・バスコライトの死』
『ベツレヘムの知らせ』
『パンの味』
『思いがけない出来事』
『青白アンナ』
『小人と人形』
『当時の天井』
『よみがえり』
『攻撃』
以上九編を収録した、掌編集。短編というにも短い作品集です。
その中身は比喩的・抽象的、ごく普通に見えるのに薄暗く深遠な日常がひろがっていました。
下手をしたら「だから何」と言われてしまいそうなエピソードが連なっているのに、倦まない飽きないむかつかない。
言葉がしんしんと積もっていくように静かに、感じさせられます。
キリスト者でありWW2も経験している著者の中身が反映されているので、それらを(ある程度)理解していないと意味を捉えきれないんじゃないかと思いました。
また、ベルの描写は色の印象を強く残しました。
衣服や周囲のものに対する色の描写が印象的かつ多かった気がします。

ハインリヒ・ベル小品集 ハインリヒ・ベル小品集
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『トニオ・クレエゲル』 トオマス・マン 実吉捷郎訳 

「マンによる若きヴェルテル」と呼ばれる、半ば私小説な青春小説。でもあれほどはっちゃけたノリではないですね。笑
こちらは恋に狂う若者というより無気力な若者を描いているからでしょうか。
マンの描写はやたら綺麗だと思います。
中身は結構抽象的だけど、マンの心理や情景の書き込みが綺麗だから、内容以前の部分で楽しめました。
「ヴェニスに死す」もそうだったなー。
この人の文章はきらきらしてると思います。名訳と言われる訳で読んでるのでそのせいかもしれませんが。
夏の陽射しっぽさをいつも感じる。
日照時間の少ない土地柄のドイツ人はイタリアの陽射しに憧れると言った学者がいましたが、そういう心理から来ていたりするのかな?
ミュンヘンは輝いていた、と言ったのはそういえばマンでした。

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『最後の審判の巨匠』 レオ・ペルッツ 垂野創一郎訳 

ドイツミステリとして紹介されることが割りと多い作品ですが、推理小説形式をとった幻想小説というのが正しいと思います。
本格を期待したら裏切られます(笑)
書評で知ってたから覚悟して読んだものの、知らなかったらキレたかもしれない(落ち着け)
ただその幻想っぷりはなかなかに上手いです。
カミュの「異邦人」を読んだ時のようなくらくらする感じが味わえました。
またラストのつくりが乱歩の「陰獣」っぽくて面白いです。
訳者はこのラストを反則のどんでん返しだと批判的に見てるんですが、これは決して反則ではなく終わりの取り方二通りのうちどちらを取るか読者に委ねたというだけでは…?
つーかこの訳者さんの解説が対談形式で非常に鬱陶しかったです…知ったかぶりっぽい上手くない語り口に萎えた。

『雪の中の三人男/ガス屋クニッテル』 エーリヒ・ケストナー/ハインリヒ・シュペール 小松太郎訳 

ケストナーとシュペールの二本立て。訳は上手くないです…(笑)
どちらも喜劇的、ブラックユーモア色の強い中篇です。
個人的にはケストナーの方が好き。
ケストナーらしい、出てくる人たちの純朴さに癒されます。小さな恋の物語も可愛いv
どんでん返しも、知らなかったらにやりと出来ただろうになー。
以前読んだケストナーの伝記で内容が紹介されてしまってたので。そこは残念でした(;;)
でもあらすじを知っていてさえ登場人物が愛しくて、だから彼らが動く様を見るのが楽しくて、飽かず読めてしまいます。
シュペールの方はもう少し、人の不幸は蜜の味、な作品に見えました。主人公の溺れ方が痛いです。

『ポオ小説全集 2幻怪小説』 エドガー・アラン・ポー 谷崎精二訳 

ポーの多くない作品の中から怪奇小説の類を集めた全集。短編ばかりです。
有名どころではアッシャー家の崩壊などが収録されていますが、私の目当ては「赤き死の仮面」でした。
病が仮面の男に姿を変えて、伝染病から隔離された屋敷へと顕れる。幻想的で恐ろしい良作です。乱歩を読む前に読んでおけばよかったです。
他の作品も不思議で面白い。死にほど近い、独特の空気がたまらんです。
アフリカへの冒険を想像で描いた作品があるなど、当時の俗文学の流行も反映されており、そういう意味でも興味深かったです。

『ヴェニスに死す』 トーマス・マン 実吉捷郎訳 

ギリシャ風の美少年にほれ込んだ老作家を描いた作品。高名ですね。
並みの作家が書いたらつまらないものになってしまいかねないような「主人公の心理描写」や「写実的な風景描写」というのがとても上手で、むしろそこにこそ惹き付けられました。
何でもないような部分が物凄い吸引力を持っています。流石です。
特に少年に関する描写は老作家の陶酔と共に語られるので、美しく官能的でした。
短いのに濃い。
好きです。

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