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『戻り川心中 連城三紀彦傑作推理コレクション』 連城三紀彦 

『花葬』シリーズと題された、花をモチーフにした短編ミステリ集。久々のスマッシュヒットでした。
これはもう私がどんなに説明をしようとしても巻末の解説の二番煎じになるだけなので、ぴたりとこの1冊を表現したその解説から引用させて頂きます。
>以下引用
ひとことでいえば、「花葬」で読者が出会うのは、自分たちが作品を読み進みながら、しらずしらずの内に作り上げてゆくその小説世界のイメージが、根底からずらされ、あるいは一気に覆される衝撃なのである。ミステリーと恋愛の結合、というよりも、ひとたび読者の心に像を結んだ「恋愛」が、ミステリーの仕掛けによって全く別の姿をあらわすような小説。どの作品にも、情緒に濡れた印象的な場面が展開されてゆくが、それは最後にいたって異なる意味を与えられ、自分は一体これまで何を見ていたのかという驚きが取って代わる。
>以上引用
これに全てがまとめられています。
紋切り型のミステリではないのです。有栖川・綾辻・京極etc.諸氏の(新)本格ミステリにはある種のパターンがあります。だから、「いつものパターン」に沿って考えれば、大体の筋が読めてきたりするのですね。本格だったらこういうネタはありえない、ああいう展開にはならない、っていう消去法も使えます。
でもこの作品群は本格でありながら、そのパターンにハマらないのです。
それでも、短編集だから数を読むうちに『連城先生のパターン』になれてくるかな、と思ったのですがそうもならず、1冊通してどの作品でもあっ、という驚きを頂きました。久しぶりの感覚です(笑)
読み進んでいる間に出来たイメージが、最後には全く違う角度の切込みで崩されます。
再読に堪える、というか再読せずにはいられません。
「ホントにそういう見方で読んでも矛盾しないのか?」と確認したくなってしまうのです。
そしてもちろん矛盾していません。
日本語の選び方が上手いのですよね。
思わず連城先生が狙ったとおりの絵を思い描いちゃうんだけど、最後まで読んだ後で戻ってくると、違った絵としてちゃんと読める。
読者を騙すテクニックが一枚も二枚も上手です。
だもんで、最初は装飾的な文体に辟易しかけたんですが(笑)全く気にならなくなりました。
もうひとつこの作品群が私のツボに来た理由に、時代が近現代に設定されているということがあります。
明治~大正頃…!大好き!
『伊藤ヒロブミが暗殺された年』とか『●●戦争の前年』とか言われると、ときの政府人たちが思い出されて楽しくてたまらんです(笑)
その時代設定の使い方もお上手です。
「菊の塵」がそういう意味では一番上手いと私は思いました。
が、この話は、私のような微妙にあの辺マニアが読むと、登場人物の素性を読むだけである程度犯人と被害者と動機の見当がついてしまうのですよね…それでも楽しめますが。
もうひとつ、「夕萩心中」で扱われている事件は、多分大逆事件をモデルにしたものでしょう。
とすると本当は時の内閣は桂たろさんで、内相後藤シンペーたんなんですが、内相が薩摩人に代わって話が出来上がっているあたりに連城さんの近現代史観を見た気がしました。
ダメ政府、ダメ藩閥、維新で負けた人たちを思いやろうよ、つか維新のあの強引さはちょっと頂けないよ、という方向かなと。「菊の塵」でも思いましたが。
少し政府擁護をしてあげたい気持ちになりました…(笑)

動機も、過程も、全てが美しくて気持ちいい1冊でした。

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