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『ハーメルンの笛吹き男 伝説とその世界』 阿部謹也 

かの有名な『ハーメルンの笛吹き男』の伝説について、元々は単なる歴史的事実であり事件だったはずのものがどのようにして伝説へと変容していったかを丁寧に論じていらっしゃいます。
笛吹き男の話は、著者いわく、『ある引率者がハーメルンの子供130人を何処かに連れ去った』事件(1284)に、後世『ネズミ捕りの男によるハーメルン市政府への復讐』(史実ではない)が付け加えられて形成された伝説なのだそうです。では何故二つが結びついたのであろうか、そもそも最初に子供を何処かに連れ去ったと言う『引率者』が『笛吹き男』と限定されていった経緯はどのようなものだったのか…等々が論証されます。
説得力を持たせる下準備として、まず、ハーメルンを初めとする6世紀辺り以降のドイツの民衆感情や権力の交代などを詳しく書いてくれています。私に世界史の知識などほとんどありませんが、それでも納得の行きやすい語り口でした。世界史(特に欧米関係の中世史)をキチンとやっている方なら、もっとすんなり楽しく読めたのではないでしょうか。
それらの社会状況が、事件を伝説に変えていく流れは非常に面白かったです。
ヒエラルヒーで言うと下層の方にいる人々の生活が少ない史料を元に解説されているのですが、全然知らない愉快な事実に驚きました。
また、伝説形成の流れではなく、笛吹き男伝説自体に今までつけられてきた解釈も代表的なところを挙げて批判を行っていらっしゃいますので、このテーマをこれから研究や創作の材料にする人には格好の入門書だと思います。
ただ私は、「史実の『引率者』はどこから来て、子供と共にどこへ消えたのか?」「それは何故か?」という疑問について著者独自の意見が示されるのではないかと期待していたので、ヴェオラー説(遭難説)に傾きつつも決定的なことは言わない(過去の説の提示と批判で終わっている)のが少々残念でした。
本の主旨が伝説形成の経緯を紐解くことだから仕様がないのかなー。

西洋史の話でありながら、土地や土地の支配者層の職名等を極力日本語名にしてくれている点に好感が持てました。
『守護』とか『知行国』とか。
西洋について語る本は無駄にカタカナ語を使う傾向があるように思うのですが、本作は比較的それが少なくて好きです。

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