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『日本語と日本人の心』 大江健三郎・河合隼雄・谷川俊太郎 

大江さんの作品には触ったことが無いのですが、河合さんのご本と谷川さんの詩はとても好きなのでうきうき読みました。
やや抽象的な日本語論です。お三方共アプローチと理念が独特で、そういう考え方もあるのだな、と目を開かされる思いでした。
独特の発想が出てくる土台には、お三方の日本語への立場の違いがあるのだろうと思います。河合さんは心理学がご専門ですし、大江さん・谷川さんは字を使う仕事という点で共通しているけれども小説と詩という違いがある。字で食べている後者お二人は、原稿への取り組み方やこれからの日本語に関する展望も全く違って意外でした。見方が違う人との討論は、付和雷同なそれよりずっと面白いですv
一番印象に残ったのは、大江さんが仰っていた「そもそも普段から使われている既存の『言葉』を組み合わせて綴る限り、この世の中に『独創的な』創作は有り得ない」(要約ですが)というお話。そう来るかあ…!

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『ハプスブルクの宝剣』 藤本ひとみ 

最初は書きたい主題が見えませんでした。
主人公@エドゥアルトがオーストリアの危機を救って認められていく様を描きたいのだったら不要な人物が多すぎると思ったのですね。特に女性。ぱっと出てすぐに消えてしまう女性の登場人物が序盤に複数いたから。マリア・テレジアに関してもどうしてあそこまで絡ませるのか解りませんでした。オーストリアにエドゥアルトを縛っておくにはフランツがいるだけで十二分に見えたので。
でも終盤のとあるエピソードで、これはエドゥアルトのユダヤ人という設定によってアイデンティティの問題を取り上げたかったのだなーとようやっと解りました。このエピソードがあるから本作を見直したので(笑・それまでは恋の鞘当がしつこすぎてちょっと辟易していた)、二人の女性は必要ですわな。
それでももう少し人物の数は削れたんじゃないかなと思います。ページ数の割に多かった。史実に基づいている分、事実として接触があった人物同士を削るわけにいかなかったのかな。私は西洋史に詳しくないのでどこまでがオリジナルの人物でどこまでが史実上の人物なのか判断が出来ませんが。

本作を読んで、西洋の外交というものを端的に知りました。常にヨーロッパとその周辺諸国の動向に気を配り、相手の人間関係や置かれている状況や求めているものを的確に読み取って、国益のためになるよう先手先手を打ってゆく。17~18世紀の世界観で既に普通にこれなら、日本が西洋に比べて外交下手だと言われるわけだ。
日本国内もドイツのように藩という小国家に分かれていたわけで、藩同士の『外交』はもちろん行われていたでしょう。
でもそれは多少の違いはあれども同じ言葉と文化と歴史を持った相手とのことで、全く違う言葉と文化と歴史を持つ国家との外交に関して日本は19世紀に入ってようやっと本格的に取り組み始めたんですよね。年季が違う。
頭脳戦を近代日本と比較するのが面白かった。

人物像について。言ってしまえば腐女子好み…?(笑)
フランツとフリードリヒのエドゥアルトへののめりこみ方も激しいですが、エドゥアルトも随分二人に執心する上女性とも恋愛を繰り返すのでなんだかエディの人物像が後半になるまで安定しなかったです;;
女性だけでもころっと相手が変わって、全て熱愛っぽく描かれてたので、一途な人が好きな私的にあまりはまり込めませんでした。
ていうか女性に対して執念のような恋愛をしながらもフランツのこと大好きなんですよねエドゥアルト…
女性へのエドゥアルトの気持ちは凄く感情的に、フランツやフリードリヒへの思いはもっと落ち着いた深いところから来ているように書かれていたのでむしろ女性=表面的な愛・フランツたち=心から愛 に、見えてしまいました。
だから前半の、両方に気持ちが行っちゃってるエドゥアルトは章ごとに人が違うみたいだった。章単位でなら分裂してなくておっもしろく読めるのにお話として見た途端人物として破綻してた、と感じました。序盤の限りではコレ長編じゃなくて短編連作のがそういうところ目立たなかったんじゃ? と思ったくらい。
テレーゼとの愛憎を消化した後はフランツと言う名の一本筋が通った感じで(…)性格がブレなくなって、引っ掛からず読めました。

ハプスブルクの宝剣〈上〉 (文春文庫)ハプスブルクの宝剣〈上〉 (文春文庫)
(1998/06)
藤本 ひとみ

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ハプスブルクの宝剣〈下〉 (文春文庫)ハプスブルクの宝剣〈下〉 (文春文庫)
(1998/06)
藤本 ひとみ

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『十角館の殺人』 綾辻行人 

伏線の張り具合と使い方が弱いこと、トリックに難があること、『本格ミステリ』を標榜する作品にしては最後の種明かしのときにはじめて出てくる情報が多いことがやや不満でした。犯人の正体への驚きはあった。でもちょっと反則だと思う。
文章は軽めでたかたか読めます。個人的には軽すぎた感アリ。
また古典ミステリ作家さんの名前を登場人物の一部に冠しているため、多分ドイルやカーなど英米の古典作家さんの名前くらいは知っているというような初心者本格スキーさんなら楽しめるのではないでしょうか。
私はエラリイが大好きなので、逆に不愉快でした(笑)本作に出てくる『エラリイ』が原作を侮辱するほどひどいというわけではありません。むしろ特徴は掴んでた。でも各作家さんのファンが読後いい気分になるとはあんまり思えません。
処女作ということで前半の難は割り引いてもエラリイは譲れんです(笑)ご本人も本格スキーさんだけどさ!知ってるけど!
『エラリイ』『ポウ』『ルルウ』というハヤカワミステリ訳(だったと思う)の表記は好きなので嬉しかったです。

鮎川先生の『解説』がよかったです。
私のような稚拙な読者による罵詈雑言や、叩くだけの書評に対する的確なツッコミ爽快でした:*:°(…でも中身にはあんまり触れてなかったよね!)

『物語 ドイツの歴史―ドイツ的とはなにか』 阿部 謹也 

世界史の中でもドイツ史をたどった本です。西洋史ではなくあくまでドイツ史なので、大体ゲルマン民族の大移動くらいから話が始まっています。
世界史に関する基礎知識がやはり要求されるので、教科書と照らし合わせつつの挑戦でした(笑)文章は時折抽象的になるものの読みやすいです。
教科書でだと事件名だけ太字で出ているようなことの、内訳(関係人物や背後事情)をより細かく扱ってくれているので、世界史を高校できちんとやっている人には良書だと思います。
というか、割と基礎事項に対しては説明を行わずたったか先に進むので(知っていることが前提にされている/多分ドイツ史をまとめるのにこのページ数だと足りてない(笑)のだと思いますが)、知らないと話がこんがらがります。

ところどころ、ドイツ史と日本史との類似点が見られて興味深かったです。
もちろん専門家の方でしたら「大きく違う」と仰るところかもしれませんが(笑)
表面を撫でた程度の私としては、日本の歴史は100年~200年後に西洋史をなぞっているように感じました。(西洋史基準の世界観・歴史観はあまり好きではないのですが)
税収や政治のシステムが特に顕著にそうだと思います。

『鉄鼠の檻』 京極夏彦 

ここまでのシリーズのまとめ話という印象を受けました。今回の軸は禅。禅の何たるか、ということが割とわかりやすく説明されています。予備知識があるに越したことは無いでしょうが、これ一冊あれば入門くらいはできそうな感じです。解説の学者さんも絶賛していらっしゃいました。(※ただし解説はネタバレを含んでいたので注意です)むしろ予備知識があればあるほど推理の着地点がわかってしまってつまらなくなるかもしれません。
相変わらず動機や事件の解釈が独特すぎて読者に推理する隙をくれませんね京極さん(笑)
そしてこれも相変わらずですが、全てにおいてやや推理がカッ飛びすぎるきらいがあります。結論の中身があり得な過ぎる。あとちょっと最後が収拾できてない感がある。それとも次回以降に持ち越しなのか…?
でもめためた面白いんだなぁ。

本作で一番カッコよかったのはやっぱり榎木津だね!(笑)神!
というか榎木津は海軍でしたね。てっきり陸かと;
階級と戦地入りの時期的にありえないとは思うけど、米内さんは面白がって可愛がりそうだなぁヤツみたいな子のことは(笑)
「あっはっは、面白い子がいるねぇ!」「そんなことより仕事してください米内さん!」みたいな。(何)あーでも戦時中は反戦派の米内さんは相当張り詰めてたみたいだからそんなうきうきしてないでしょうな。
あと吉田茂がやたら引き合いに出されるのは何なんだろう(笑)嬉しいじゃないの(え)舞台設定が1953年前後のようだからか。ギリギリ尾崎が生きてるかどうかくらいだよ…! ご存命だったらどうしよう! 黄金髑髏とか、凄い面白がって記事追っかけてそうだなーvv(キューン)

『明治・大正・昭和政界秘史―古風庵回顧録―』若槻/禮次郎 

大蔵省系に勤めながら立憲同志会→民政党に所属、首相も務めた若槻禮次郎さんの往年の回顧録です。執筆の途中でお亡くなりになったそうで(;;)未完成なのが残念。ほとんど書き終えられてはあるのですが。

政・軍界どちらの人間も出てきては財政の交渉をして行きますね。
また、禮さんが無理な予算をやめさせるべく交渉をしていることもあります。あくまで彼の目から見ているからかもしれませんが、無い袖は振らない姿は格好いいです。
少数派党は大変なんだな、というのが感想の二点目。
金銭・人数・党員の人心掌握に苦心する幹部たちの姿が…でも犬養さんほどはお金に困ってないように見えた(笑)実際のところどうなのかわかりませんが、…民政党の皆さんも自慢のコレクション売ってお金作ったりしたんですか…(聞くな)というか各党の財政事情が数字で知りたい今日この頃。
あと割とハラケーはどこにでも出てくるのかな。(…長いこと政友会仕切ってたから?/笑)この本にもいらした。嬉!
政治家の評価って本によって結構違うのに、原のイメージや評価って大きく変わらないのが面白い。このわが道を行くクール&ドライっぷりがたまらなくてよハラケー…!

愉快なエピソードというより、後世歴史の研究や政治に役立つような、政治の転機転機にあったことが選られている感じです。
淡々とした語り口、時々の思考の柔軟さから、執着心は強くないけど芯にしっかりしたものを持った人という感じが致しました。
巻末には学者さんによる、史料を並べながらの若槻論も展開されており、本文中にある記述(記憶)の間違いが訂正されているのが歴史初心者にはありがたかったです。今まで読んだ本の中で一番長い解説だった気がする…(笑)

『海外パックツアーをVIP旅行に変える78の秘訣』 喜多川リュウ+パックツアー向上委員会 

海外パックツアーを、安く・楽しく・豪華にする裏技や豆知識が詰まってますv
海外旅行に興味のある方は読んでおいて損無しです。買ってもいいかもしれない。
喜多川氏は現役の添乗員さんで、委員会=旅通の皆様と、『ちょっとしたコツでこんなことができる』ってことをたくさんの実例をあげながら書いて下さってます。文章は軽快で読みやすく、ハリポのようにところどころ強調されていて(笑)大事な部分もわかりやすい。
言ってみれば結構我侭も通るものなのだな、ということと、やはりトラブルは付き物なんだなと思いましたです(笑)
旅行業界の裏側も随分ネタにされています。フライトアテンダントさんやホテルマン、旅行代理店、空港会社の皆様等等、携わる人たちの生の声が活かされていました:*:°

『九尾の猫』 エラリイ・クイーン 

<後半に引用有>

原題は『CAT OF MANY TAILS』なわけですが、この題に訳した訳者さんにはお見事と言いたいです。

クイーンと言えば、『初期は論理後期は心理』、の通り、心理描写が秀逸でした。
はっちゃけトリックや犯人というのは解りやすいし、初期の論理的なクイーンを愛していたら文句を言いたくもなるかもしれないお話です。本作をクイーンの手始めとして読んだら絶対他を読もうとは思わないでしょう。でも、順番にエラリイのシリーズを読んできたエラリイスキーならこの話を胸にとめておかない筈がない。
前作『十日間の不思議』を引きずりながらのエラリイは痛々しかったです。最後は読むのが辛かった。

登場人物には、久々に腹を立てました(何)最近魅力的でスキスキーって思うような人ばかりだったのになぁ(笑)
ジェームスとセレストの無駄に若さ溢れるラブラブカップルがね!(笑)傷心のエラリイの傷口に塩を塗るような真似ををを…っ

「戦争がはじまってからは、わしは新聞を読まん。新聞は苦しみたい人のものだ」。
至言だと思います。
政治を読めば国の先を憂わずには居れない。いつも誰かが死んでいる。怪我をしている。新聞は痛いです。

九尾の猫 (ハヤカワ・ミステリ文庫 2-18)九尾の猫 (ハヤカワ・ミステリ文庫 2-18)
(1978/07)
エラリイ・クイーン

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『ハーメルンの笛吹き男 伝説とその世界』 阿部謹也 

かの有名な『ハーメルンの笛吹き男』の伝説について、元々は単なる歴史的事実であり事件だったはずのものがどのようにして伝説へと変容していったかを丁寧に論じていらっしゃいます。
笛吹き男の話は、著者いわく、『ある引率者がハーメルンの子供130人を何処かに連れ去った』事件(1284)に、後世『ネズミ捕りの男によるハーメルン市政府への復讐』(史実ではない)が付け加えられて形成された伝説なのだそうです。では何故二つが結びついたのであろうか、そもそも最初に子供を何処かに連れ去ったと言う『引率者』が『笛吹き男』と限定されていった経緯はどのようなものだったのか…等々が論証されます。
説得力を持たせる下準備として、まず、ハーメルンを初めとする6世紀辺り以降のドイツの民衆感情や権力の交代などを詳しく書いてくれています。私に世界史の知識などほとんどありませんが、それでも納得の行きやすい語り口でした。世界史(特に欧米関係の中世史)をキチンとやっている方なら、もっとすんなり楽しく読めたのではないでしょうか。
それらの社会状況が、事件を伝説に変えていく流れは非常に面白かったです。
ヒエラルヒーで言うと下層の方にいる人々の生活が少ない史料を元に解説されているのですが、全然知らない愉快な事実に驚きました。
また、伝説形成の流れではなく、笛吹き男伝説自体に今までつけられてきた解釈も代表的なところを挙げて批判を行っていらっしゃいますので、このテーマをこれから研究や創作の材料にする人には格好の入門書だと思います。
ただ私は、「史実の『引率者』はどこから来て、子供と共にどこへ消えたのか?」「それは何故か?」という疑問について著者独自の意見が示されるのではないかと期待していたので、ヴェオラー説(遭難説)に傾きつつも決定的なことは言わない(過去の説の提示と批判で終わっている)のが少々残念でした。
本の主旨が伝説形成の経緯を紐解くことだから仕様がないのかなー。

西洋史の話でありながら、土地や土地の支配者層の職名等を極力日本語名にしてくれている点に好感が持てました。
『守護』とか『知行国』とか。
西洋について語る本は無駄にカタカナ語を使う傾向があるように思うのですが、本作は比較的それが少なくて好きです。

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