FC2ブログ

『スティール・キス』 ジェフリー・ディーヴァー 


リンカーン・ライムものの12作目。
数年前オーストラリアに行ったとき空港の書店で売っていた原書を自分へのお土産として買ってたのにやっと翻訳を読むという
原書で読んだとき、ここにはたぶんこう書いてある気がするけどそうだとしたら驚愕の展開すぎてどうなっちゃうの!?と思っていたことがだいたいその通りだったようで、事件そのものの展開とともにライムとサックスの関係がどうなってしまうのかもドキドキハラハラしながら読みました。
本作の鍵となるのがはIOT家電。コナンくんの映画「ゼロの執行人」でもテーマになっていたやつですね。
ディーヴァーは時事ネタというか、現代社会で新しく登場した問題などにスポットライトを当てるのも上手いなあとしみじみしました。
シリーズずっと追っているのに見事などんでん返しを食らいましたし、ライム・サックスが大好きなもので、個人的にすごーく嬉しい展開もあって満足です。
なお本作において好きなライムの台詞もメモしておきます。
「生きていて慰められることがあるなんて貴重だ。そうだろう?」

スポンサーサイト



『夜のアポロン』 皆川博子 

本の紹介にはミステリ短編集とありましたが、犯罪・幻想小説短編集という感じでしょうか。いわゆる謎解きミステリに該当する短編のみならず、人間の歪みのようなものが豊かな語彙で描き出されており、読みながら陶酔できる一冊だなと思いました。
特に湿度粘度の高い「女」の描写が生々しくて、わかる…それな…としみじみしながら読みました…
皆川先生の描写する女性のああ女だなあと思わせられる感じ、長野まゆみ先生の少女のエグさとちょっと通じるものを感じます。
刊行経緯を読むとまたすごい。
紙で書かれていた頃の、データもなければコピーも残っていない短編をまず掲載誌などから探して集めて整理して…という作業、数や時間経過を考えると果てしないなと思います。
いまの読者が読める形にまとめ直して下さりありがとうございます…!

以下は収録作について徒然
「死化粧」明治初期の話。好きな時代の話がたまたま読めて嬉しかったです。馬場辰猪が演説している描写がった
「ガラス玉遊戯」リスカについての描写(その事象、母娘の関係性を含めての)がすごかった あと生まれてくる子供の生きる辛さを思ったら……のあたりもすごい 描写が刺さる
「サマー・キャンプ」泳ぐ描写がとにかく水の中の感覚を的確に想起させてくるのでめちゃめちゃ水に入りたくなりました。
プールでひたすら泳ぐのが好きなのですが、プールの波立たない水のイメージはサマーキャンプの湖水と通じるものがあって
「ほたる式部秘抄」暗号!一番ミステリらしいミステリであった気がしました
「閉ざされた庭」蔵にしまわれていた短刀のことが描写されていて、刀剣乱舞を履修していてよかったです。
幼年期の主人公と短刀の関係性のこと、刀剣履修しているかどうかで読んだときの心持ちがけっこう違ったんじゃないか~な
編者解説「作家自身の評価が読者のそれと乖離して、不当に低いケースは間々あるから」「読者としたらそんな事はありませんよ、ということは、何度でもお伝えしておくべきだろう。」皆川先生でも…皆川先生の完成度でもそうかあ…!!!!

『明治・金色キタン』 畠中恵 

明治時代初期の日本を舞台に、原田・滝のミステリアスな巡査さんコンビが事件に巻き込まれる連作短編集。
ひとつひとつのお話単独でも面白く読める作品集ですが、個人的には二話「花乃と玻璃」が溶くに印象的でした。
みんなで小金を出し、力を貸しあって、お互いの願いを叶えることを目的とした会を作るんだけど、どうしても叶う願いと叶わない願いが出てきて、不平等から上手くいかなくなるという話。
会のことが説明されたとき、目的は悪くないような気がする…と思ってしまったけれど、確かに一方的に尽くす者が出てくるはずだという指摘は正しいしそれは軋む。
この会は「宗教のよう」な仕組みなのに「宗教ではない」と主張して運営していた、つまり現世利益を求めた人たちばかりがやってきたから「みんなに尽くしても今すぐにリターンがないなら意味がない」と参加者が結論して失敗していましたが、
もし「宗教である」として運営されていて、他者を助けることそのものに何らかのメリットがあるんだよ~とか来世でそのぶん報われるんだよ~とか主張していたら結果は違っていたのかな…などと考えさせられました。
アクションもあるしキャラ立ちもいいし、アニメ化などしてくれたら楽しそうなシリーズです。
文庫版解説は声優・女優・文筆家の池澤春菜さん。前作のことを踏まえた楽しい解説、キノコトークが導入にあるのがとても池澤さんらしくて可愛かったです。

『七十四秒の旋律と孤独 -Sogen SF Short Story Prize Edition- 創元SF短編賞受賞作』 久永実木彦 

友人からのお薦めで読みました。短編で、書籍にはまだまとまっていないのかな? 電子書籍でこちら一本だけを購入。
宇宙とロボットのSFで、用語の使い方や世界観も王道、アクションありミスリードあり、素直に楽しかったです。短編のなかにSFわくわくぎゅっと詰め余韻ありというような
また、公募で受賞した作品であるので各応募作への選評が付いていたのが、すごくこう…自分でもいちおう小説を書くので、背筋が伸びる思いでした…そして勉強になりました。

『かぼちゃの馬車』 星新一 

久々に星先生のショートショートを読みました。
昭和四十八年刊行とは思えないくらい現代の風潮が見通されててびっっくりする…!!
初対面でも話が弾むように共通の話題を見つけ出してくれる機械とか、一家に一台ロボットの時代が行き着く先とか、想像で予見したのかと思うと凄すぎる。
あとやっぱり「エヌ氏」って言われると星先生のショートショート読んでる~~!!!ってかんじでわくわくしてしまうな
かんべむさし先生の解説も、星先生の文章へのたとえが素敵でした。

『30代でちいさなカフェはじめました』 岩上喜実 

仕事で今後経営者の方とお話する機会が増えそうだ、ということで、企業の仕方について知りたいと思ったものの、複雑な内容では多分理解できない…ということで、取っつきやすそうな印象から手に取ってみた1冊。
カフェ経営の準備や裏側という内容がおもしろそう、かつ著者の岩上さんはイラストレーターでもあるためふんだんにイラストを使った誌面が読みやすそう、という予想に違わずさらっと読めました。
本当に基本的な事項を柔らかく書いて下さっているので、理解しやすい一方、本格的にカフェ運営をという方にとってはもう少し詳しく知りたいと感じる部分も多いかもしれません。
元書店員でもあるという岩上さんこだわりのカフェは、ごはんが美味しそうで雰囲気が素敵なのはもちろん、書籍もたくさん置かれているとのこと。是非足を運んでみたくなりました。
鳥取旅行に行くときは忘れずに!
HPがないようなので、Facebookをはっておきます→https://ja-jp.facebook.com/Noncafe

『笑う大英帝国―文化としてのユーモア』 富山太佳夫 

王族貴族から政治家までこきおろし、馬鹿では分からない理知的なネタから下ネタまで飛び出して来る、イギリスにおけるユーモア・笑いについて書かれた1冊。

章ごとの内容は、ざっくり分けると、
1章~3章:王族・政治家・貴族という笑いの対象となる身分別
4章~5章:パロディについて
6章:聖書や戦争という扱い方によっては「不謹慎だ」と怒り出す人がいそうなものを「笑う」ことについて
7章:同性愛について

挿絵があれば挿絵もふんだんに引用されているため、イギリス文化に造詣の深くない私でもおかしさが伝わってきました。
富山先生の語り口もとにかくユーモラス。
政治家貴族を笑い倒すイギリスを、富山先生は「歴史的に不真面目」「理解できない」「下品」とざっくり切ってゆかれます。
そこには「けなし愛」とでも言いましょうか、暖かみのある目差しがあるように思いました。ちょっと半笑いでこきおろしておられる、ような笑
イギリスとイギリスのユーモアが本当にお好きだからこの本が生まれたのだろうな、と勝手ながら感じました。

第3章が「御主人様はアホですから―執事の伝統」という題を冠しているところから期待はしておりましたが、バーティ&ジーヴスが紹介されていたこともとても嬉しかったです。


笑う大英帝国―文化としてのユーモア (岩波新書)笑う大英帝国―文化としてのユーモア (岩波新書)
(2006/05/19)
富山 太佳夫

商品詳細を見る